糖尿病の判定基準と測定方法

糖尿病の判定基準と測定方法

糖尿病の有無を調べるためには、血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の値を測定する必要があります。
何を基準に「糖尿病である」と診断されるのか、そしてどのような検査でその数値を測定するのか、詳しく見ていきましょう。

血糖値について

血糖値とは、血液中を流れるグルコース(ブドウ糖)の濃度を数値で表したものです。
生活する上で常に多少の変動を繰り返している数値であり、特に空腹時と食後とでは大きな差が出ます。
食事で摂取した糖が血液中へ溶け出すためです。
健康な方であれば、上昇した血糖値は膵臓から分泌されたインスリンの働きによって徐々に低下し、食後2時間程度で正常値に戻ります。
しかし、インスリンが不足している方はこの血糖値のコントロールが上手く機能しないので、上昇した数値が正常値まで下がりません。

血糖値は、その数値の大きさによって正常型(問題なし)、境界型(糖尿病予備軍)、糖尿病型(糖尿病と診断される)の3種類に分けられます。
測定するタイミングでも変わりますが、例えば空腹時に血糖値を測定した場合は、110mg/dl未満だと正常型、110から125mg/dlだと境界型、126mg/dl以上だと糖尿病型です。
検査を進める中で、計2回糖尿病型と診断されるなど、一定の条件を満たすと糖尿病であると診断されます。
また、正常型の範囲内であっても、100から109mg/dlの範囲に該当した場合は正常高値と呼ばれ、定期的な検診が推奨されます。

ヘモグロビンについて

血糖値の他、糖尿病の診断に欠かせないのがHbA1cです。
赤血球の中に存在し、全身の細胞へ酸素を送る役割を持つヘモグロビンが、血液中のブドウ糖と結合することでHbA1cに変化します。
血糖値が高いと、ヘモグロビンとブドウ糖の結合が活発になり、HbA1cの値も上昇するため、計測することで糖尿病の危険があるかどうかを知ることができるのです。

ヘモグロビンは、1度ブドウ糖と結合すると赤血球の寿命(約120日)が訪れるまで元に戻ることはありません。
そのため、HbA1cを測定することで、過去120日間の血糖値の平均を調べることが可能です。
また、当日の食事や体調の影響を受けずに検査を進められます。
HbA1cの測定は、糖尿病と診断された後の治療効果を見る際にも1つの指標となります。
数値が6.0%未満だと正常値、正常値のうち5.6から6.0%だと正常高値、6.0から6.5%だと境界値、6.5%以上だと異常値です。
更に、7.0%を超えてしまうと合併症を引き起こす恐れが高いため、専門医に相談しましょう。

血糖値測定

本格的な糖尿病の検査及び診断は、内科や糖尿病専門外来などで行います。
検査方法としては、通常の健康診断と同じように、腕の静脈から採血して血糖値やHbA1cの値を計測する血液検査が一般的です。
検査前日の夜9時から食事を控え、翌日の午前中に採血を行う空腹時血糖検査では、血糖値が126mg/dlを超えると糖尿病型と診断されます。
生活リズムや時間帯と関係なく採血を行う随時血糖検査では、血糖値が200mg/dl以上を示すと糖尿病型の範囲内です。

これらの他、75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)と呼ばれる検査方法もあります。
空腹の状態で1度採血を行った後、ブドウ糖液(75gのブドウ糖を水に溶かしたもの)を飲んで30分、1時間、2時間が経過したタイミングでそれぞれ採血を行い、血糖値の変化を測定する方法です。
2時間後の血糖値が200mg/dl以上の場合は、糖尿病型と診断されます。
この検査方法は、高血糖時にはさらなる血糖値の上昇を引き起こすため使用されません。

また、高血糖の場合は尿と一緒に排泄されるブドウ糖の濃度が高くなるので、尿検査でも糖尿病を疑われるケースがあります。
全てが糖尿病と結び付くわけではありませんが、尿糖が陽性と診断された場合は注意が必要です。

血糖値検査は自宅でもできる?

簡易的なものであれば、自分で血糖測定器などを用いて計測することも可能です。
針の付いた器具を指先に刺して採血し、専用の測定器で数値を計測します。
結果はノートに記録してまとめておくと、ご自身の体調管理の目安になると共に、医療機関を受診した際の問診がよりスムーズになるでしょう。
特に、すでに糖尿病と診断されている方は、血糖値の測定を習慣付けることで症状の改善を目指しやすくなります。

参考:糖尿病診療ガイドライン2019「糖尿病診断の指針」